網膜色素変性症 障害基礎年金2級:年額¥1,300,000
新潟市・40代・男性
1.相談に来られた状況
幼少期は視野狭窄により、少しの段差でつまづき転び、夜は親を起こし電気をつけてもらわなければトイレにいくこともできなかったそうです。
ご両親は眼の症状に違和感を抱きながらも、「そそっかしい子。よく前をみて歩きなさい。」と注意するだけでした。
中学校へ上がりようやく、周りの友達が異変に気付き、その後助言があって眼科を受診されました。「網膜色素変性症」と診断されましたが、有効な治療法がなく、治らない病気とされていた為、数回の通院で終診されたそうです。
40代になって障害年金を知り、平成27年7月10日に国民基礎年金の申請を自身でされましたが、すぐに不支給の連絡が口頭でされたそうです。
大人になってからは、就労は制限され、家族の援助なしには日常の生活は過ごせなくなっていました。
受給を希望され、当センターにご相談にこられました。
一度行政の決定されたものは、覆すことは非常に難しいことをお伝えし、契約となりました。
まずは、不支給決定の通知は受け取ってないとのことで、行政決定の確認をするところから始めました。
2.経過
まずは、本人様が申請された申請書類を精査するために、日本年金機構へ申請書類一式を開示をしました。
合わせて不支給理由を確認しました。
不支給理由は、「初診日が確認できないため」となっていました。
不支給となった申請書類を精査すると、当時の眼科医院は廃院しており、受診状況等証明書は添付できなかったため
①第三者証明13名分
②初診日と病名を記載した当時母親のメモを証明書類で申請されでいました。
残念ながら13名分作成していただいた「第三者証明」は証明能力は無かったと言わざるを得ない内容でした。
初診日を証明する医証が取れない(廃院)のであれば、間接的にでも証明してゆくことが必要になります。
そこでまずは、第三者証明の内容確認を証明能力の高い内容を記載してもらうことにしました。
やはり思い出話や感情的なお願いでは事実証明はできません。
少なくとも間接的に事実が推認できるような内容で書き直しをお願いたしました。
それと同時に初診日を証明できる間接的な証拠書類の収集も開始いたしました。
(卒業アルバム、通知票、文集、日記、メモ、その他)
やがて、探していただいた通知票等が届きました。
保護者から学校へ ~欄に「今後も野球クラブで遅くなる時、暗くなると眼がみえないので迎えにいく」と言った内容が記載されていたので、当時の野球クラブの先生から直接お話しを頂き、第三者証明に使うこととしました。
何とか当時の先生を探し出し、依頼したところ、当時の野球クラブの先生から第三者証明を記載して頂くことができました。
第三者証明4名分、通知票、初診日、病名、受診した医院名が記載された母親のメモで初診日証明としました。
3.結果
障害基礎年金 事後重症請求(加算あり)で支給が認められ2級 年額¥1,302,700受給ができました。
4.社労士 齋藤の視点
20歳前障害、幼少期からの病気、人工透析などの方の場合、初診日が数十年前にさかのぼることも多く初診日を証明することが困難なケースとなる場合があります。
障害年金は「申請主義」です。
つまり、「事実」はあっても、証明ができなければ受給することができません。
歴史的な事実として「初診日」に受診されていても、「日常生活が著しく制限され、障害があっても」申請者が証明できない限り不支給となります。
障害年金は、法律要件を満たせば受給できるのだから、誰が申請しても同じ結果なはず。だから「成功報酬」という名称は不適切であると指導を受けたことがあります。
しかし、法律要件を証明するためには2種類の立証方法があります。1.直接証拠による証明、2.間接事実からの推認証明です。
障害年金は、1.初診日要件、2.保険料納付要件。2.障害(認定日)要件3つを証明し事実証明できれば、障害年金の受給権を得ることができます。
この3つの要件のうち、2つ目の保険料納付要件だけは、年金機構がデータをもっていますから申請者が証明する必要はありません。
(初診日証明ができれば、自動的に年金機構が確認できるからです。)
このような、推認するまでもなく、行政機関が保有しているデータ事実は、直接証拠と言えるでしょう。
ちなみに、老齢年金の場合、法律要件はすべて年金機構が保有しているデータから確認できます。
つまり申請者は申請者本人をであることを特定、確認できる状態にするだけで、あとは年金機構が直接証拠を確認して受給決定するだけです。
つまり、誰が申請しても結果は同じ。
社労士でも、本人でも、銀行員でも郵便局員でも、同じです。(法律的には、銀行員、郵便局員が申請代行を行うことは、法令違反となることがあります。)
問題は、1の初診日、3の障害要件は、直接証拠や間接事実からの証明してゆかなければなりません。
今回のケースのように、廃院によって初診日証明が取れない場合は、多角的に、事実が推認できるような間接証拠を集めることで間接事実を認定できる状態にしてゆく必要があります。
3.障害要件は、現在、医師が作成した診断書のよって証明することとなっています。
しかし、診断書は、直接証拠としては、かなり不完全なものです。
契約書のような、両者とも内容を確認合意の上作成するものではないからです。
医師が医師の持つ情報と、知見によって作成するからです。
医師のレベルや実力差によって大きく内容が違ったものとなるからです。
当センターでは、数多くのカルテ開示を行い、数百人の医師作成の診断書を確認してきました。
そもそも、各医師の情報収集の能力差、医療技術の差、障害年金など法律的理解度の差。。。どの業界でもピンキリがあります。技術力、能力差が偏在しています。
特に検査結果、計測値などエビデンスがあるものはそれほどズレは生じないかと思います。
問題は、「精神の病気」などのようにエビデンスはない、担当する医師の主義、能力、経験等、よって大きく左右される場合です。
診断書自体が直接証拠という位置づけではありますが、実際には医師というフィルターを通した、関節事実であるとも言えます。
どのような事が間接事実事実になるのか、どうしたら事実推認してもらえるのか。
障害年金に、正解はありません。正解も、絶対もない中で、手探りで道を探してゆくのが障害年金専門家の仕事だと感じます。