多発性内骨腫 左上腕骨軟骨肉種 障害基礎年金2級:年額¥795,000
1.相談に来られた状況
生まれつき身体中に良性の腫瘍があり、幼少期より腫瘍摘出術を繰り返し受けておられました。6歳の頃、左手の腫瘍摘出に伴い、人差し指と中指を切除され、左手を使うことが出来なくなりました。
22歳の頃には左の上腕骨に悪性の腫瘍ができ、腫瘍全摘と左上腕橈骨切断、また上腕骨の骨破壊もあり、右足の血管柄付腓骨を移植しました。移植後は左上肢の変形が酷く、身体を動かすことが難しくなったと仰っておりました。
リハビリをしても機能は回復せず、就労をしても周りと同じように仕事をこなせず、長続きしませんでした。
2年ほど前にも障害年金の申請を検討されて準備を進められていました。当時、相談されていた社労士との折り合いが悪く、契約には至らず、申請がとん挫している状態でした。
仕事で少し無理をすると身体に負担がかかり、痛み等で動けなくなることが増え、休職されたとのことでご相談いただきました。
2.経過
まず初めに、既に取得済みの診断書などの内容を確認させて頂きました。記載内容からは状態が悪いことは確認出来ましたが、すべての書類に整合性がありませんでした。
大学病院作成の診断書には幼少期から手術を繰り返されていることについて記載があり、取得された受診状況等申立書には24歳のころ、発症・初診と記載されていました。
診断書には幼少期が初診と明記されている為、取得した受診状況等証明書は使えないと判断しました。
30年以上前の初診日を特定し、証明できなければ、どんなに障害が重くても申請すらすることが出来ないからです。
幼少期に受診した記憶のある医療機関(他県)を調査したところ廃院している事が判明しました。その他受診履歴など記録を調査し情報収集を行い精査しました。
他県で20年程前の手術履歴が判明し、カルテ開示を行い膨大な資料(100ページ以上)の中に、初診日の記載を発見する事が出来ました。
その他初診日を証明する複数の間接的証拠を元に初診日を特定し申請を行いました。
3.結果
障害基礎年金、事後重症請求で支給が認められ2級 年額¥795,000受給ができました。
4.社労士齋藤の視点!
申請するにあたり、書類一式の内容が不整合、又は証明能力がないと不支給となってしまう事はよく聞く話です。
今回は相談者の方が、役所の担当者に相談した際に、不備のあった医証で「申請はできる」と回答された事案でもありました。役所の担当者の「申請はできる」という回答は間違ってはいないかもしれません。
役所の窓口は書類の過不足を確認し受領する事が業務内容となっているからです。「申請はできる」とは言っても、「受給できる」とは言ってないのです。受給の可否判断が出来る機能、能力、職務も無いのですから当然です。
一般の方々から見ると、窓口の対応はいい加減に感じるかもしれません。しかし、申請書類を受け取る事だけが職務なのです。
また、今回のような30年以上前の受診歴を探したり、医証を作成してもらう事は困難なケースが多いです。5年でカルテ廃棄している医療機関が多く、さらには廃院している場合も十分にあるからです。
このような場合は直接証拠を得ることはできませんから、当センターでは様々な角度から間接証明を行う事で申請し、受給に結び付けています。
障害年金は、申請者に証明責任(内容を証明する責任)がある制度です。
少なくとも障害年金の支給3要件を自身で確認しましょう。障害年金の必要度が高く、法令要件の知識が無ければ、迷わず専門家に依頼するべきであると思います。
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